スコアの仕組み

「配当持続性スコア」は、決算短信の数値から機械的に算出する本サイト独自の指標です。配当の水準・方針・これまでの実績(配当 50点)、財務の余力(財務 25点)、本業で稼ぐ力(収益 25点)の3つの面から、配当がこの先も続きやすいかを100点満点で整理します。このページでは、各項目の点数の付け方をすべて説明します。全体像を1分で知りたい方は初めての方へをご覧ください。

このページの読み方

対象範囲: 国内上場の事業会社が対象です。J-REIT(不動産投資信託)は分配金の仕組みが事業会社と異なるため、スコアの対象外です。

スコアの時点: 各記事のスコアは、その決算短信で算出した時点の値で、過去記事のスコアは原則更新しません(詳しくは末尾の「スコアの時点と訂正の方針」)。

全体構成

  • 計100点(以下 3 カテゴリ)
  • 配当 50点 = 配当性向 + DOE + 配当利回り + 配当方針の強度 + 増配・減配耐性
  • 財務 25点 = 自己資本比率 + ネットキャッシュ + 営業CF安定性
  • 収益 25点 = 営業利益率 + ROE

ランクの目安(合計点に応じて5段階のランクを付けます)

総合点 配当持続性ランク 補助表記
85〜100 A(極めて高い) ★★★★★
70〜84 B(高い) ★★★★☆
55〜69 C(標準的・注視が必要) ★★★☆☆
40〜54 D(懸念がある) ★★☆☆☆
0〜39 E(警戒水準) ★☆☆☆☆

採点に使う期(どの期の値で採点するか)

項目 四半期・中間期の記事(Q1〜Q3カルテ) 本決算の記事(Q4カルテ)
配当性向 当期の会社予想 当期の実績
DOE 当期の会社見込み、または直近通期の実績(選び方は DOE の節) 当期の実績
配当利回り 当期の会社予想DPS 来期の会社予想DPS
配当方針の強度 記事作成時点で会社が示している配当方針(決算短信・中期経営計画など) 記事作成時点で会社が示している配当方針(決算短信・中期経営計画など)
増配・減配耐性の「次期予想」 当期の会社予想DPS 来期の会社予想DPS
自己資本比率 四半期末・中間期末の貸借対照表 期末の貸借対照表
ネットキャッシュ 四半期末・中間期末の貸借対照表 期末の貸借対照表
営業CF安定性 前期までの通期5期 当期までの通期5期
営業利益率 当期の会社予想 来期の会社予想
ROE 当期の会社予想 来期の会社予想

当期は、四半期・中間期の記事では進行中の事業年度、本決算の記事では決算を迎えた事業年度で、来期はその翌事業年度です。決算期の変更などで期がずれる銘柄は、各記事に記した対象期間に従います。営業利益率と ROE の四半期単独・累計の実績は、記事の「詳細データ」欄に載せますが採点には使いません。

ご利用上の注意

※本スコアは決算短信の数値から機械的に算出した独自指標であり、将来の減配可能性や投資収益を予測するものではありません。


採点の共通ルール

用語と表の読み方

用語の一覧を見る

このページでの用語の意味です(詳しくは用語集)。

用語 このページでの意味
DPS 1株あたりの年間配当。このページでは原則として実質普通配当ベースの値
実質普通配当 記念配当・単発の特別配当を除いた配当。継続して支払われる特別配当は普通配当として扱う
EPS 1株あたり純利益。決算短信に載る法定EPS(会社独自の調整後の利益ベースではない)
DOE 株主資本配当率。配当総額 ÷ 自己資本 × 100
ROE 自己資本利益率。純利益 ÷ 自己資本 × 100
営業CF 営業キャッシュフロー。本業の営業活動で実際に得た現金の出入り
株数 指標ごとに違います。DOE を本サイトが計算するときは自己株式を除く期末株式数、ネットキャッシュの時価総額は自己株式を含む期末の発行済株式総数
次期予想 直近の実績期の次の期の会社予想。四半期・中間期の記事では当期、本決算の記事では来期の会社予想(本サイトの用語で、決算短信の「次期」と同じ年度とは限らない)
通信キャリア / SIer 本サイトのサブ分類。通信キャリア=携帯・固定回線などの設備を持つ通信事業者、SIer=受託開発が主体の情報・通信業

表の読み方: 「A〜B%」は A%以上 B%未満です。配当性向の「+A〜+Bpt」は、中央値との差が A pt を超え B pt 以下(+10pt ちょうどは 9 点)です。

特別配当・記念配当の扱い

増配・減配の判定では、記念配当や単発の特別配当を除いた実質普通配当で比べます。本サイトでは、決算短信「配当の状況」で内訳を確かめてから判定します。

実例と確認の手順を見る

理由: 公的データベースから機械的に取得した配当(表面DPS)は、会社が公表する記念配当・特別配当の内訳を分けていません。表面の値のまま比べると、普通配当は増え続けているのに「過去5年内に減配あり」と誤って判定されることがあるためです。

例: 6866 日置電機の2021年12月期の表面DPS 165円には、上場30周年記念配当30円が含まれます(普通配当135円)。表面値では2021年12月期→2022年12月期に165→160円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは135→160円で増配です。

特別配当・記念配当を含む銘柄の記事では、過去6年の配当を実質普通配当ベースで整理した表を掲載しています。

確認の手順:

  • 決算短信「配当の状況」で、過去6年の各期について、普通配当と記念配当(「○周年記念配当」「上場記念配当」等)の内訳、期末特別配当の有無、配当方針での特別配当の位置づけ(継続して支払うか単発か)を確認します
  • 内訳が分かったら、特別配当・記念配当を除いた実質普通配当ベースで過去6年の系列を作り直します
  • 作り直した系列で「増配・減配耐性」を判定し直します

ほかの実例:

  • 6436 アマノ: 2019年3月期・2020年3月期の期末配当には特別配当20円が含まれます(2020年3月期の表面84円 = 普通64円 + 特別20円)。表面値では2020年3月期→2021年3月期に84→65円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは64→65円で増配です。
  • 9687 KSK: 2024年3月期の表面DPS 226円には創立50周年記念配当138円が含まれます(普通配当88円)。表面値では2024年3月期→2025年3月期に226→124円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは88→124円で増配です。
  • 9682 DTS: 2023年3月期の表面DPS 120円には創立50周年記念配当50円(中間20円+期末30円)が含まれます(普通配当70円)。表面値では2023年3月期→2024年3月期に120→103円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは70→103円で増配です。
  • 2335 キューブシステム: 2023年3月期の表面DPS 50円には創立50周年記念配当24円が含まれます(中間記念12円+期末記念12円・普通配当26円)。表面値では2023年3月期→2024年3月期に50→35円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは26→35円で増配です。
  • 2169 CDS: 2024年12月期の表面DPS 78円には期末記念配当10円が含まれます(普通配当68円+記念配当10円)。表面値では2024年12月期→2025年12月期に78→74円で減配と見えますが、実質普通配当ベースでは68→74円で増配です。

株式分割があった銘柄の扱い

株式分割(または併合)があった銘柄では、分割で1株あたりの配当が小さくなっただけで減配と見えないよう、分割前の配当を分割後の株数に換算して比べます(分割後ベース)。決算短信「配当の状況」の注記と株式分割の開示資料で、分割の比率と時期を確認しています。

会社予想が無いとき・数値が揃わないとき

会社予想が無いとき: 会社予想が未定・非開示のときは、配当性向(四半期・中間期の記事のみ。本決算の記事は当期実績を使います)と営業利益率は直近の通期実績で、配当利回りは直近の実績DPSで代用し、「実績DPS(予想未定のため代用)」のように本文に注記します。DOE はDOEの節の順で決めます。

数値が揃わないとき: DOE(会社開示値が無く、計算に必要な数値も揃わないとき)と営業CF安定性(営業CF は 5 期分が揃わないとき)は、0 点として合計に入れず、数値を確定してから公開します。会社が開示していないだけで計算できる場合は計算して採点します。増配・減配耐性で配当の履歴が取得できない・足りないときは、同じ節の判定前の例外処理に従います。


① 配当(50点)

配当性向(10点)

配当性向(%) = 1株あたり配当(DPS)÷ 1株あたり純利益(EPS)× 100

DPS は実質普通配当、EPS は法定EPSです(用語)。期は採点に使う期のとおりです。

配当性向の「標準的な水準」は業種によって違うため、業種ごとの中央値との差で採点します。個別の中央値を持つ業種・サブ分類(対象: 電気・ガス業、通信キャリア、卸売業(商社を含む)、銀行業、保険業、その他金融業、倉庫・運輸関連業、医薬品、石油・石炭製品、不動産業(事業会社)、SIer)はそれぞれの中央値を、それ以外の業種は共通の中央値を使います。各業種の中央値は業種ごとの補正一覧の表のとおりです。

採点(業種の中央値との差で判定): 配当性向が低いほど配当を払う余力が大きく、減配しにくいと考えるため、中央値以下は満点とし、中央値を上回った分だけ段階的に減点します。

配当性向(業種中央値との乖離) 得点
中央値以下(中央値ちょうどを含む・余裕あり=配当原資に対して保守的) 10点
中央値〜+10pt(理想範囲) 9点
+10〜+20pt(やや高い) 7点
+20〜+30pt(かなり高い) 4点
+30pt超 / 赤字配当 0点
計算例と参考値を見る

例: メーカー(中央値35%)で配当性向40% → 乖離+5pt → 9点

例: 電気・ガス業(中央値60%)で配当性向23% → 中央値以下 → 10点(配当余裕大)

例: SIer(中央値25%)で配当性向50% → 乖離+25pt → 4点

四半期・中間期の記事で会社予想がある場合の直近通期実績や、本決算の記事の来期予想の配当性向は、参考として本文に併記しますが採点には使いません。

銀行業・保険業・その他金融業の配当性向(会社が掲げる修正利益ベースの配当性向との違い)は金融業の扱いにまとめています。全業種の補正の一覧は業種ごとの補正一覧です。

DOE(10点)

DOE(%) = 配当総額 ÷ 自己資本 × 100(株主資本配当率の一般的な定義)

採用する値の順(上から順に、使える値を採ります):

記事 採用する値の順
四半期・中間期の記事 ①会社が当期の DOE を「見込む」「予想」として数値で明記した値 → ②直近の通期決算短信に記載された実績の DOE → ③本サイトの計算値
本決算の記事 ①その決算短信に記載された当期実績の DOE → ②本サイトの計算値

①は四半期決算短信「配当の状況」の予想欄のほか直近の通期決算短信の本文の記載も含み、表の予想欄が空欄でも使います。同じ当期について複数あるときは、カルテ作成時点で最新の会社公表値を使います。

本サイトの計算式: 1株あたり配当(四半期・中間期の記事は当期の会社予想、本決算の記事は当期の実績。いずれも実質普通配当)× 期末株式数(自己株式を除く)÷ 自己資本(期首と直近開示時点の平均)× 100。上の一般式を1株あたり配当と期末株式数で計算する形で、記事本文に算出根拠を明記します。

DOE 得点
5%以上 10点
3〜5% 7点
1〜3% 4点
1%未満 0点

「目途」「目安」「目標」「下限」として掲げた DOE は配当方針(配当方針の強度で評価)として扱い、DOE の値には使いません(配当予想とあわせて「DOE ○%を目途に」と示した数値も同じです)。上表の「1%未満 = 0点」は実際の DOE が1%を下回る場合の帯で、会社が開示していないことを理由に0点にはしません。DOE を確定できないときの扱いは数値が揃わないときをご覧ください。

計算例と詳しいルールを見る

計算例(本サイトが計算する場合): 1株あたり配当50円 × 期末株式数(自己株式を除く)1,000万株 = 配当総額5億円です。自己資本が期首90億円・直近110億円なら平均は100億円で、DOE は 5億円 ÷ 100億円 × 100 = 5.0% → 10点です。

①の「明記した値」の範囲(四半期・中間期の記事): 直近の通期決算短信の本文では、利益配分に関する基本方針などの記載が対象です。同じ当期について明記された値が複数あり最新の会社公表値を使うときは、出典と公表日を本文に記します。

本決算の記事の来期の見込み: 本文に来期の見込み DOE があっても採点には使いません(参考として併記します)。

配当利回り(10点)

配当利回り(%) = 1株あたり配当(DPS)÷ 株価 × 100

  • 株価: 記事作成時点で筆者が証券会社のアプリ等で確認した、直近の取引日の終値を採点に使います。
  • DPS(分子): 会社予想のDPS(実質普通配当)を使う予想利回りです。期は採点に使う期、会社予想が無いときは会社予想が無いときのとおりです。
  • 記事での表記: 本文に分子の種別(予想DPS/実績DPS)と採点結果を記載し、株価と利回りの数値は掲載しません。

配当利回り 得点
4.5%以上 10点
3.5〜4.5% 7点
2.5〜3.5% 4点
1.5〜2.5% 2点
1.5%未満 0点

計算例: 予想DPS 60円 ÷ 株価 1,500円 × 100 = 4.0% → 7点です。

配当方針の強度(10点)

決算短信や中期経営計画に書かれた配当方針の文言を、下の表の条件にあてはめます。

開示状況 得点
累進配当(減配なし+毎期増配/維持を明示) 10点
DOE目標を明示 8点
配当性向目標を明示 / 期間を決めた配当額の約束(額面下限コミット): N円の維持と、中計期間・N期・周年などの期間をあわせて明示 6点
安定配当を定性的に明記(総還元性向・株主還元性向のみの数値目標を含む) 3点
配当方針の言及なし 0点

総還元性向の扱い: 総還元性向・株主還元性向(配当と自社株買いを合わせた還元の割合)の数値目標だけを掲げている場合は、配当そのものを決める基準ではないため、「安定配当を定性的に明記」と同じ3点とします。配当性向の目標か期間を決めた配当額の約束があれば6点、DOE の目標は8点、累進配当は10点で、複数に当てはまるときは点の高い区分を採ります。

会社の文言と区分の例を見る

会社の文言と区分の例(表のどの行に当たるかの目安です):

会社の文言の例 当てはまる区分(表の行)
「累進配当を基本方針とし、減配は行わず、配当を維持または増やす」 累進配当
「DOE 3.5%を目安に配当する」 DOE目標を明示
「連結配当性向40%を目標とする」 配当性向目標を明示
「中計期間中は1株120円を維持する予定」 期間を決めた配当額の約束
「安定的な配当を継続する」 安定配当を定性的に明記
「総還元性向50%以上」だけを掲げ、配当そのものの目標がない 安定配当を定性的に明記と同じ区分

期間を決めた配当額の約束: 「中計期間(2026年3月期〜2028年3月期)は1株120円を維持する予定」「75周年までは1株100円を継続」のように、配当額(N円)、維持・継続・据え置き、期間(中計期間・N期・周年・YYYY年まで等)の3つをそろえて方針として示している場合は、配当性向目標と同じ6点です。「3期連続で100円に据え置いた」といった実績の報告だけで、方針として示していない場合は3点(定性的な方針)です。

増配・減配耐性(10点)

直近5年の配当(実質普通配当)と次期予想で判定します。

判定の流れ: 配当の履歴がまったく取得できないとき、または足りないとき(2015年以降の上場など)は「判定前の例外処理」の点にします。それ以外は「判定順序」の表を上から順に当てはめ、最初に当てはまった行の点にします。例外処理の表のうち「判定の材料が足りないとき」の中間の点は、履歴が足りていても表のどの行にも当てはまらないときに限って使う区分です。

判定前の例外処理

例外 得点
配当の履歴がまったく取得できない(運用フォールバック) 0点
配当の履歴が足りない(2015年以降の上場など)、または判定の材料が足りないときの中間の点(暫定中立) 7点

判定順序(上から順に評価し、最初に該当した区分を採用)

判定順 条件 得点
1 3年以上連続増配 + 直近5年で減配なし + 次期予想で増配 10点
2 3年以上連続増配 + 直近5年で減配なし 8点
3 直近5年で減配なし + 次期予想で維持以上 8点
4 取得できた配当の履歴が5期以上 + その全期間で減配なし + コロナ期(2020/2021)の減配なし + 次期予想が取得できない 8点
5 直近5年内の減配がコロナ期(2020/2021)のみ + 直近2年は減配なし + 3年以上連続増配で回復 + 次期予想で維持以上 5点
6 直近5年内に減配があり、5点・0点のどちらの条件にも当たらない(単年減配からの回復を含む) 2点
7 直近2年内に連続減配、または直近期も減配継続(次期予想でさらに減配)、無配転落(直近期 DPS=0) 0点

直近期が無配の場合: 直近期の1株当たり年間配当(実質普通配当ベース)が0円(無配)のときは、判定前の例外処理や判定順序の表、次期予想(復配予想を含む)に関係なく0点です。

連続増配年数の数え方: 連続増配年数 N は、1株当たり年間配当(実質普通配当ベース)が前期より増えた期の数です(終了年 − 開始年 + 1 の年数ではありません)。無配(0円)からの初配・復配は増配に数えず、その翌期を連続増配の起点とします。配当を据え置いた期があると、連続はいったん途切れます。

補足

「直近5年」は、記事の公開時点からさかのぼる5期です。時間の経過とともに、対象期間も1期ずつ進みます。


② 財務(25点)

自己資本比率(10点)

自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

決算短信に記載された値を使います(期は採点に使う期)。

自己資本比率 得点
60%以上 10点
40〜60% 7点
20〜40% 4点
20%未満 0点

業種補正: 事業の構造上、自己資本比率が低くなりやすい業種(対象: 卸売業(商社を含む)、医薬品、電気・ガス業、通信キャリア、不動産業(事業会社)、陸運業(鉄道・運輸)、建設業(ハウスメーカー・ゼネコン)、海運業(外航・内航)、倉庫・運輸関連業)と金融3業種(対象: 銀行業、保険業、その他金融業(リース・保証・クレジット等))は、別の帯で評価します(上の表は補正のない業種の帯です)。帯と理由は業種ごとの補正一覧に、銀行業・保険業などの扱いは金融業の扱いにまとめています。

ネットキャッシュ(10点)

ネットキャッシュ = 現金及び預金 + 短期有価証券 − 有利子負債

時価総額比(%) = ネットキャッシュ ÷ 時価総額 × 100

対象ごとの扱いは次の表のとおりです。

対象 扱い 使う金額
現金及び預金 算入する(プラス) 貸借対照表の流動資産にある当期の金額(「現金及び現金同等物」ではありません)
短期有価証券 算入する(プラス) 流動資産のものだけ
CMS短期貸付金(グループの資金を親会社に預けたもの) 算入する(プラス) 例外: 会社が CF 計算書で現金同等物として扱うもの
有利子負債 差し引く(マイナス) 範囲は下の「有利子負債の範囲」
投資有価証券、関係会社株式、長期貸付金、長期預金、保険積立金、前払年金費用 算入しない ―

有利子負債の範囲: 「有利子負債」は会社が開示している定義に合わせます(社債及び借入金 + リース負債)。会社が「有利子負債合計」「純有利子負債」を自ら開示している場合は、その定義に従います。IFRS(IFRS16)を採用している企業は、オペレーティングリースを含むリース負債を必ず算入します(除外しません)。日本基準の企業はファイナンスリース債務を算入します(オペレーティングリースは貸借対照表に載らないため対象外)。銀行業は預金を有利子負債に入れ、保険業は保険契約負債(責任準備金等)を入れず社債・借入金等だけで算定します。

算入しない理由とリース負債の扱いを見る

算入しない理由: 投資有価証券(投資その他の資産=長期)や関係会社株式などは、取引先との関係維持のために持ち続ける政策保有株のように、すぐに売って現金化できるとは限らず、算入するとネットキャッシュが実態より大きく見えてしまうためです。現金及び預金は貸借対照表の金額を使うので、預入期間が3か月を超える定期預金も現金に含まれます。有利子負債は、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、長期借入金、社債、コマーシャル・ペーパー、IFRS 採用企業のリース負債など、利子のつく負債です。

リース負債の扱い(IFRS と日本基準の違い): 日本基準の企業はファイナンスリース債務が対象で、オペレーティングリースは貸借対照表に計上されないため対象外です。この扱いのため、店舗や車両などを賃借している IFRS 採用企業は、リース負債の分だけ負債が大きく計上され、日本基準の企業より構造的にやや厳しめの評価になります。

時価総額の計算方法: 時価総額は、記事執筆時の終値 × 期末の発行済株式総数(自己株式を含む・決算短信1ページ目の株数)で計算します。自己株式を差し引いた株数や、「純利益÷EPS」で逆算した期中平均株数は使いません。期末から執筆までの株数の増減は調整しません(株式分割・併合があったときだけ、株価と株数の単位をそろえます)。株数や株価の基準日が違うため、証券サイト等の時価総額とは異なる場合があります。

時価総額比を次の表にあてはめます。

ネットキャッシュ 得点
プラス、かつ時価総額の30%以上 10点
プラス、時価総額の10〜30% 7点
プラス、時価総額の10%未満 4点
マイナスだが時価総額の5%以内(ほぼゼロ・0〜-5%) 2点
マイナス(有利子負債超過) 0点

時価総額比がちょうど 0%(ネットキャッシュの金額が 0)のときは 4 点、ちょうど -5%のときは 2 点です。

業種補正: 事業の構造上ネットキャッシュがマイナスになりやすい業種は、マイナスでも最低2点とします(プラスのときは上の表どおり)。対象は次の業種に限られ(対象: 卸売業(商社を含む)、医薬品、電気・ガス業、通信キャリア、陸運業(鉄道・運輸)、建設業(ハウスメーカー・ゼネコン)、海運業(外航・内航)、倉庫・運輸関連業、その他金融業(リース・保証・クレジット等))、小売業・外食・サービス業など店舗を借りて営業する業種は対象外です。銀行業・保険業もこの下限の対象外です。理由は業種ごとの補正一覧にまとめています。

計算例: 現金及び預金 250億円 + 短期有価証券 50億円 − 有利子負債 100億円 = 200億円です。時価総額が 1,000億円なら時価総額比は 20% → 7点です。

営業CF安定性(5点)

採点に使う期の通期5期の営業CF(キャッシュ・フロー計算書)で評価します。5期分の数値が揃わないときの扱いは数値が揃わないときをご覧ください。

判定順 条件 得点
1 5期のうち営業CFが赤字の期が2回以上 0点
2 5期のうち営業CFが赤字の期が1回(5期平均がマイナスでも1点) 1点
3 赤字の期は無いが、5期平均が0以下(全期ゼロ等) 0点
4 5期平均からの差が全期±20%以内 5点
5 5期平均から最も離れた1期を除いた残り4期がすべてプラスで、その4期平均から±20%以内 4点
6 それ以外(赤字は無いがブレが大きい) 3点

判定の順序: 表の1から順に当てはめ、最初に当てはまった行の点になります。赤字の期があればブレ幅は見ず、CF がちょうど 0 の期は赤字に数えません。

計算例と詳しいルールを見る

1期だけ大きく外れた場合の4点: 5点には届かないものの、5期平均から最も離れた1期を除くと残り4期が安定している場合の中間の帯です。M&A・特別損失などの一時的な要因で1期だけ大きくぶれた銘柄が典型ですが、判定は数値だけで行い、ぶれの要因は問いません。除外後の4期にゼロの期が残る場合は4点にならず3点です。

計算例(4点になる例): 5期の営業CFが 50.0・28.3・51.4・41.0・57.8億円の場合、5期平均は45.7億円です。28.3億円は平均より約38%低く(57.8億円も約27%高く)、±20%を超える期があるため5点にはなりません。平均から最も離れた28.3億円を除いた4期(50.0・51.4・41.0・57.8億円)はすべてプラスで、その平均は約50.1億円です。41.0億円が約18%低く、57.8億円が約15%高いものの、4期ともこの平均から±20%以内に収まるため4点になります。


③ 収益(25点)

営業利益率(15点)

営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100(保険業は営業利益の区分が無いため、経常利益 ÷ 経常収益 × 100〔日本基準〕または税引前利益 ÷ 保険収益 × 100〔IFRS〕を営業利益率の代わりに使います。詳しくは金融業の扱い)

期は採点に使う期のとおりです。

営業利益率 得点
15%以上 15点
10〜15% 12点
5〜10% 8点
0〜5% 3点
赤字 0点

業種補正: 卸売業(商社を含む)・金融3業種(銀行業・保険業・その他金融業)は構造的に低くなるため、5%以上15%未満を12点とします(15%以上は本則どおり15点、5%未満も本則どおり)。

全業種の補正の一覧は業種ごとの補正一覧です。

ROE(10点)

期は採点に使う期のとおりです。

ROE 得点
15%以上 10点
10〜15% 7点
5〜10% 4点
0〜5% 1点
マイナス 0点

ROE の計算方法: ROE(%) = 予想純利益 ÷ 自己資本 × 100 です。自己資本は期首(前期末)と直近の開示時点の平均を使います。本決算の記事は来期予想で採点するため、来期中の自己資本の増減は予測せず、当期末の自己資本を使います。実績の期の ROE は、会社が開示した値を優先します。


業種ごとの補正一覧

業種による補正を、項目ごとに横に並べた一覧です。ここに無い業種は、すべての項目で補正なし(下の「上記以外の業種」の行)です。自己資本比率の帯の全体と補正の理由も、同じ折りたたみの中にまとめています。各項目の説明は配当性向・自己資本比率・ネットキャッシュ・営業利益率の節をご覧ください。

業種ごとの補正一覧の表を見る

業種 配当性向の中央値 自己資本比率 ネットキャッシュ 営業利益率
電気・ガス業 60% 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
通信キャリア(本サイトのサブ分類) 60% 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
卸売業(商社を含む) 50% 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 5〜15%で12点
銀行業 50% 20%以上で10点 補正なし 5〜15%で12点
保険業 50% 20%以上で10点 補正なし 5〜15%で12点
その他金融業(リース・保証・クレジット等) 50% 20%以上で10点 マイナスでも最低2点 5〜15%で12点
倉庫・運輸関連業 50% 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
医薬品 45% 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
石油・石炭製品 45% 補正なし(60%以上で10点) 補正なし 補正なし
不動産業(事業会社) 40% 40%以上で10点 補正なし 補正なし
陸運業(鉄道・運輸) 補正なし(35%) 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
建設業(ハウスメーカー・ゼネコン) 補正なし(35%) 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
海運業(外航・内航) 補正なし(35%) 40%以上で10点 マイナスでも最低2点 補正なし
SIer(本サイトのサブ分類) 25% 補正なし(60%以上で10点) 補正なし 補正なし
上記以外の業種 補正なし(35%) 補正なし(60%以上で10点) 補正なし 補正なし

自己資本比率の「40%以上で10点」は構造的に低くなる業種の帯、「20%以上で10点」は金融3業種の帯です(7点・6点・4点などの下の帯は下の表をご覧ください)。営業利益率の「5〜15%で12点」は5%以上15%未満を12点とする補正です(15%以上は15点)。通信キャリア・SIer の意味は用語をご覧ください。

自己資本比率の帯(業種補正ごとの全部の帯)

得点 補正なし 構造的に低くなる業種 金融3業種
10点 60%以上 40%以上 20%以上
7点 40〜60% 25〜40% ―
6点 ― ― 10〜20%
4点 20〜40% 20〜25% ―
0点 20%未満 20%未満 10%未満

補正の理由(「―」はその項目では補正の対象外)

業種 自己資本比率が低くなりやすい理由 ネットキャッシュがマイナスになりやすい理由
電気・ガス業 大規模な設備投資(装置産業) 大規模な設備投資(装置産業)
通信キャリア(本サイトのサブ分類) 大規模な設備投資(装置産業) 大規模な設備投資のための借入
卸売業(商社を含む) トレーディング資産・在庫・出資のための借入 仕入販売・在庫の運転資金
銀行業 金融業は自己資本比率10〜20%が構造的に標準的な水準 ―
保険業 金融業は自己資本比率10〜20%が構造的に標準的な水準 ―
その他金融業(リース・保証・クレジット等) 貸出・運用資産が主体の総合金融サービス 貸出・運用資産が主体で、「現金 − 有利子負債」が構造的にマイナスになる
倉庫・運輸関連業 賃貸用不動産・物流施設の取得借入で、今後低下する可能性がある 賃貸用不動産・物流施設(賃貸用オフィスビル・倉庫・共同住宅等)の取得借入
医薬品 大型M&A・買収によるのれん 大型M&A・買収によるのれん
不動産業(事業会社) 物件取得のための借入 ―
陸運業(鉄道・運輸) 線路・車両・基地・新幹線などの大規模な設備投資 線路・車両・基地・新幹線などの大規模な設備投資
建設業(ハウスメーカー・ゼネコン) 販売用不動産(分譲建物・分譲土地)の取得や受注工事の運転資金のための借入 販売用不動産(分譲建物・分譲土地・未成分譲土地)や受注工事の運転資金
海運業(外航・内航) 大型船舶の取得・建造・改修のための有利子負債 大型船舶の取得・建造・改修
金融業の扱いを見る

金融業(銀行業・保険業・その他金融業)の扱い

金融業は、預金・保険料・貸出が事業の中心で、ほかの業種と同じ物差しでは低く出やすい項目があるため、上の一覧のとおり補正します。あわせて次の点に注意してください。

配当性向: 本スコアの配当性向は法定EPSベースの表面値(年間DPS ÷ 法定EPS)です。損害保険大手などが還元方針に掲げる「修正利益ベースの配当性向(例: 修正純利益の50%)」とは分母が異なる別の指標で、表面値が会社方針の目標値より低く出ることがあります(各記事で区別して記載します)。

自己資本比率: 金融業は自己資本比率10〜20%が構造的に標準的な水準のため、金融3業種の帯で評価します。

ネットキャッシュ: その他金融業はマイナスでも最低2点です。銀行業・保険業には下限がなく、ほかの業種と同じ表で評価します。銀行業は預金を有利子負債に入れるため大幅なマイナスになりやすく、保険業は保険契約負債(責任準備金等)を有利子負債に入れず社債・借入金等のみで算定するため、プラスになる例もあります。

営業利益率(保険業の代わりの指標): 保険業は損益計算書に「営業利益」の区分が無いため、経常利益 ÷ 経常収益(日本基準)または税引前利益 ÷ 保険収益(IFRS)を、営業利益率に相当する代わりの指標として使います。後者は投資損益等を含み、分母の保険収益と完全には対応しないため、各記事で分子・分母を明記します。


スコアの時点と訂正の方針

各記事のスコアは、その決算短信を入力に算出した時点の値です。次の四半期決算が出れば、新しい記事で再計算します(過去記事のスコアは更新しない)。

ただし、スコア計算の間違い、または評価基準となるデータの不備により大きくスコアが変わる場合は例外として、過去記事のスコアも修正します。修正時はスコアと記事内訳のみを更新し、決算時点の事実記述や時系列の連続性は保ちます。

これにより「過去の決算時点では何点だったか」の時系列比較が可能になります。


改訂履歴

採点ルールの主な追加・変更の記録です(点数の付け方に関わるものを中心に記載)。

改訂履歴を見る(27 件)
  • 2026-04-29: 配当性向の採点を、中央値±10ptを満点とする方式から「中央値以下を満点とし、上回った分だけ減点する」方式へ変更(電気・ガス・通信・銀行など、中央値より低い配当性向が一般的な業種が不当に低く評価される問題の解消)。不動産(事業会社)の自己資本比率の業種補正を改訂
  • 2026-04-30: 特別配当・記念配当の扱いを追加
  • 2026-05-02: 商社・卸売の自己資本比率の業種補正を改訂
  • 2026-05-03: 医薬品の配当性向の中央値、医薬品・通信・電力・ガス・陸運業の自己資本比率の業種補正、医薬品・通信・電力・ガス・陸運業・卸売業のネットキャッシュの業種補正を追加
  • 2026-05-06: 建設業の自己資本比率・ネットキャッシュの業種補正を追加
  • 2026-05-10: 海運業の自己資本比率・ネットキャッシュの業種補正を追加
  • 2026-05-13: 石油・石炭製品とその他金融業の配当性向の中央値、その他金融業の自己資本比率・ネットキャッシュの業種補正を追加
  • 2026-05-15: 倉庫・運輸関連業の配当性向の中央値と、自己資本比率・ネットキャッシュの業種補正を追加
  • 2026-05-25: 配当方針に「額面下限の約束」を追加。営業CF安定性に「1期だけ大きく外れた場合の4点」の帯を追加
  • 2026-05-26: 増配・減配耐性の2点と0点の条件を整理
  • 2026-05-31: 保険・金融大手の配当性向の補足、保険業の営業利益率の代用指標、銀行業・保険業のネットキャッシュの扱いを追加
  • 2026-06-06: ネットキャッシュの有利子負債を会社開示の定義に合わせる扱い(IFRS採用企業のリース負債を含む)を明記
  • 2026-07-03: 配当利回りの分子を「会社予想DPS(実質普通配当ベース)」と明文化(それ以前の記事は直近の実績DPSを中心とした旧運用で作成しており、遡及修正はせず、次回のカルテから新基準へ移行)
  • 2026-07-06: ネットキャッシュに含める現金・含めない資産を明文化
  • 2026-08-03: 営業利益率・ROE の採点に使う期を明文化
  • 2026-08-04: ネットキャッシュの時価総額比に使う株数と時点を明文化
  • 2026-08-13: 銀行業・保険業のネットキャッシュの扱いを明確化
  • 2026-09-03: 連続増配年数の数え方を明文化
  • 2026-09-05: DOE の値の求め方を明文化。営業CF安定性の「1期だけ大きく外れた場合の4点」の帯を明確化
  • 2026-09-06: 総還元性向の扱いと、DOE を確定できない場合の扱いを明文化
  • 2026-09-30: 配当性向・DOE・配当利回りの採点に使う期を明文化し、DOE の値の順序を改訂。ページ構成を見直し(冒頭の案内・用語表・改訂履歴を新設)、記載の誤り(★表記の説明・早見表の増配・減配耐性の条件・特別配当の実例の年度・ROE の分母の表現・配当性向の業種中央値の一覧)を訂正
  • 2026-09-30: 読みやすさを改善(ランクの目安の表を1つにまとめ、営業CF安定性の表を判定の順に並べ替えて計算例を追加。ネットキャッシュに算入するもの・算入しないものと、自己資本比率・ネットキャッシュの業種補正を表にまとめ、業種ごとの補正の一覧と金融業の扱いのまとめを新設。細かいルールを「詳しいルール」の折りたたみに移した。自己資本比率の業種補正では、これまで記載のなかった20〜25%=4点と金融3業種の10%未満=0点も明記)。点数の付け方は変わりません
  • 2026-09-30: 増配・減配耐性の判定順序の表に、これまで記載のなかった「取得できた配当の履歴が5期以上で、その全期間で減配がなく、次期予想が取得できない場合=8点」の行を追加(従来から採点で使っていた区分の明記)。点数の付け方は変わりません
  • 2026-10-01: ページ構成を見直し(採点の共通ルール節を新設し、各項目の説明の順序をそろえた。項目ごとの点数の目安と配点バンド早見表は公開ページから外した)。点数の付け方は変わりません
  • 2026-10-01: 業種ごとの中央値・補正の表、例、計算例、改訂履歴などを折りたたみ(押すと開く)にしました。業種補正の対象の業種名は折りたたみの外に並べています。点数の付け方は変わりません
  • 2026-10-02: 増配・減配耐性で、直近期が無配(0円)の銘柄は判定順に関係なく0点であることを明記(点数が変わる記事はありません)
  • 2026-10-02: 注記の文体を整え、営業利益率・ROE の期を冒頭の表に、業種補正の表を補正一覧にまとめ、ネットキャッシュの算入範囲を表にしました。点数の付け方は変わりません