📊 スコア: B 74点
💰 配当: 100→112円(+12円)、うち中間56円は実施決定
✅ 良い点: 累進配当方針、配当性向25.5%、自己資本比率60.8%
⚠️ 注意点: ネットキャッシュ大幅マイナス、資源価格連動、イクシス依存
1. 業績ハイライト
- 売上収益1兆4億円(△4.6%)・原油販売量△22.8%
- 営業利益6,187億円(+0.3%)・売上総利益は△7.2%
- 親会社帰属利益2,631億円(+17.7%)・実効税率は低下
- 通期予想を上方修正・親会社帰属利益は前期比+29.5%予想
- 中間配当56円を決定・年間112円へ前回予想108円から+4円上方修正
サマリー
- 見出しと中身の乖離: 売上収益は△4.6%だが売上総利益は△7.2%と本業の稼ぎが縮んでおり、営業利益+0.3%はその他の営業収益+404億円が穴を埋めた結果である
- 増益の源泉は税負担の軽さ: 税引前中間利益は△0.1%とほぼ横ばいで、親会社帰属中間利益+17.7%は実効税率が62.43%から55.84%へ下がったことでほぼ説明できてしまう
- 通期予想は大幅な上方修正: 親会社帰属当期利益を3,500〜4,500億円から5,100億円へ引き上げた。下期の原油前提を上期実績87.6ドルから75.0ドルへ下げた上での数字だ
2. 配当判断サマリー
- 年間配当は前回予想108円から112円へ+4円上方修正され、前期比+12円。中間56円は実施が決定済みで、2021年12月期から数えて6期目の増配見込みとなる
- 中期経営計画(2025-2027)で「1株当たり年間90円を起点とする累進配当」を明示し、機動的な自己株式取得と合わせて総還元性向50%以上を掲げる。配当方針は10/10の満点
- 配当性向25.5%・自己資本比率60.8%と原資には余裕がある一方、DOEは2.64%、配当利回りは2.92%と水準そのものは高くない
- 同じ累進配当方針で配当方針10点を取る三菱商事(8058)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)と方針の点数は並ぶ。本銘柄の特徴は収益25点中22点という利益率の高さにあり、一方で3社ともネットキャッシュはマイナス帯(本銘柄と8306が0点、8058は業種補正で2点)という共通点がある
3. スコア内訳
配当持続性ランク: B(74/100点) ★★★★☆
| カテゴリ | 配点 | 得点 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 配当 | 50 | 38 | 性向10・DOE4・利回り4・方針10・耐性10 |
| 財務 | 25 | 14 | 自己資本10・ネットキャッシュ0・営業CF安定性4 |
| 収益 | 25 | 22 | 営業利益率15・ROE7 |
| 合計 | 100 | 74 | — |
3-1. 主な加点(高得点項目)
- 営業利益率 15/15: 通期予想61.99%(営業利益1,223,000百万円 ÷ 売上収益1,973,000百万円)を採点根拠とし、15%以上の帯で満点。中間期累計でも61.84%(+3.03pt)。精製・小売を持たない上流開発は原価が償却費中心の固定費型で、単価が上がると利益率が跳ねる構造にある
- 配当性向 10/10: 25.5%(当期予想の年間配当112円 ÷ 予想EPS438.82円)。鉱業は配当性向の業種補正対象外で中央値35%が適用され、中央値以下で満点。前期実績も30.2%で、2021年12月期以降の5期はいずれも32%を下回っている
- 配当方針 10/10: 「1株当たり年間90円を起点とする累進配当」を2026年8月7日公表の配当予想修正リリースで明示し、2025年度から2027年度の中期経営計画期間中の株主還元方針と位置づけている。累進配当の宣言はガイド最高水準
- 増配減配耐性 10/10: 2021年12月期の48円を起点に5期連続増配で、採点対象の直近5期(2021年12月期〜2025年12月期)に減配なし。当期も100→112円(+12円)の増配予想で、3年以上連続増配+減配なし+増配予想の条件を満たし満点。決算期変更に伴う変則期(2019年4〜12月)は採点対象期間の外にある
- 自己資本比率 10/10: 60.8%(親会社所有者帰属持分比率・前期末61.4%から△0.6pt)。60%以上の帯で満点。資源開発企業として高水準で、国際会計基準に移行した2022年12月期以降も59.0〜65.3%のレンジを保っている
- 営業CF安定性 4/5: 直近5期(2021年12月期〜2025年12月期)はいずれも黒字。2021年12月期の4,455億円だけが5期平均から△33.8%と外れるが、この1件を除いた残り4期は±20%以内に収まるため「単発外れ値1件を除外」帯の4点
- ROE 7/10: 通期予想10.36%(親会社の所有者に帰属する当期利益510,000百万円 ÷ 親会社所有者帰属持分4,924,864百万円=前期末4,747,158百万円と中間期末5,102,570百万円の平均)。10〜15%帯で7点
3-2. 主な減点(低得点項目)
- ネットキャッシュ 0/10: 現金及び預金216,190百万円 + 短期有価証券0百万円 − 有利子負債1,427,500百万円(会社開示の有利子負債合計1兆4,275億円) = △1,211,310百万円。時価総額約48,313億円の△25.1%で「マイナス(有利子負債超過)」帯。鉱業はネットキャッシュの業種補正対象外のため救済がなく0点になる
- DOE 4/10: 2.64%。短信に純資産配当率の記載欄がないため本ブログで算出した(算出根拠は§6-1)。1〜3%帯で4点で、配当性向25.5%という低い水準がそのまま自己資本に対する配当の軽さとして出ている
- 配当利回り 4/10: 2.92%(予想DPS112円 ÷ 株価¥3,837・2026-08-26終値)。2.5〜3.5%帯で4点
3-3. スコアの動き(定点観測)
- スコアの位置: 74点はBの下半分。配当50点中38点・収益25点中22点を確保する一方、財務は25点中14点にとどまり、ここが全体を押し下げている
- Bにとどまる理由: 点を作っているのは配当方針10/10・増配減配耐性10/10・営業利益率15/15の3つ。頭打ちにしているのはネットキャッシュ0/10で、石油・ガス資産を4兆円規模まで積み上げる上流開発の資金構造上、有利子負債1兆4,275億円が手元資金を大きく上回る状態が常態化している。DOE2.64%・配当利回り2.92%も、配当性向25.5%という低さの裏返しとして小さく出ている
- 読み筋: 同じ物差しで見ると本銘柄は「方針の強さと原資の余裕で点を稼ぎ、財務のレバレッジで削られる」型になる。定点観測で追う値は、①累進配当の起点である年間90円に対して実際のDPSがどこまで積み上がるか、②自己株式取得1,400億円(上限)の消化状況と総還元性向50%以上の達成度、③下期の原油前提75.0ドル・為替160.0円に対する実勢、の3点である
※本スコアは決算短信の数値から機械的に算出した独自指標であり、将来の減配可能性を予測するものではありません。過去のデータ上の傾向を整理した参考情報としてご利用ください。
4. 事業の強み・構造リスク
4-1. ✅ 事業の強み
- 中東の外側に置かれた主力資産: 中東情勢で「その他のプロジェクト」の生産量が△9.0%落ちるなか、豪州イクシスの天然ガス生産は日量1,089→1,092百万CFと横ばいを保った。減産局面でも供給が途切れない資産を持つことが配当原資の下支えになる
- 油価に連動しない収益源の芽: 再生可能エネルギー・電力関連、CCS・水素等を含む「その他」セグメントが△5,331→+2,436百万円と初めて黒字化した。中間利益の0.9%と規模は小さいが、価格連動でない利益が生まれ始めた
4-2. ⚠️ 構造リスク
- 単一プロジェクトへの利益集中: 中間利益の65.8%をイクシス1件が稼ぎ、前年の62.2%から集中度が上がった。操業トラブルや豪州の税制変更が起きた場合、他セグメントで吸収できる規模を超えて配当原資に響く
- 数量を地政学に握られている: 原油販売量は△22.8%で、会社は中東情勢の影響と説明する。価格や為替と違い会社の努力で戻せる変数ではなく、通期予想でも「不確実性は依然として残る」と留保が付いたままである
- 連結の外側に置かれた資産の大きさ: 非流動の貸付金1兆4,462億円と持分法投資1兆1,348億円が資産合計の30.8%を占め、持分法による投資損益749億円が営業利益の12.1%に入る。相手先や内訳は短信に開示がなく、利益の源泉を財務諸表だけでは追い切れない
保有状況: 筆者は本銘柄を 保有しています(株数は非開示・2026年8月時点)。
5. 筆者メモ
割安に見えた局面で拾えたことが、持ち続けられている一番の理由だと思う。資源価格が下がれば利益も配当も揺れるが、取得価格が低いぶん、仮に累進の前提が崩れるような場面でも慌てずに済む。
6. 配当の見方
6-1. 配当の中身
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 2025年12月期(前期)実績 | 年間100円(中間50+期末50) |
| 2026年12月期(当期)予想 | 年間112円(中間56実績+期末56予想)・+12円増配 |
| 配当性向(連結・表面・当期予想) | 25.5%(112円 ÷ 予想EPS438.82円・スコア算出ベース。記念配当・特別配当がないため表面と実質普通配当ベースは同値) |
| 配当性向(連結・表面・前期実績・参考) | 30.2%(100円 ÷ EPS330.82円) |
| DOE(連結・純資産配当率) | 2.64%(短信に純資産配当率の記載欄がないため本ブログ算出。112円×自己株式控除後の期末株式数1,162,220,005株=130,169百万円 ÷ 期首4,747,158百万円と中間期末5,102,570百万円の平均4,924,864百万円) |
| 配当利回り | 2.92%(予想DPS112円 ÷ 株価¥3,837・2026-08-26終値・J-Quants API) |
| 配当方針 | 2025-2027中期経営計画の株主還元方針として「1株当たり年間90円を起点とする累進配当」を明示。機動的な自己株式取得と合わせ、総還元性向50%以上を目指すと公表 |
| 連続増配年数 | 5期連続増配(2021年12月期〜2025年12月期)+ 当期予想112円で 6期目 |
(注)上表は普通株式に係る配当。非上場の甲種類株式1株には別建てで年間44,800円(中間22,400円+期末22,400円予想)の配当が予定されている。2013年10月1日を効力発生日とする普通株式1株→400株の株式分割を甲種類株式には実施しておらず、分割前の普通株式と同等の配当になるよう定款で定めているためで、普通株式56円×400=22,400円と完全に一致する。年間の配当総額は44,800円にとどまり、本カルテのスコアはすべて普通株式ベースで算定している。
6-2. 過去年度 連結DPS・EPS・配当性向(EDINET DB 引用、配当÷EPS再計算)
2022年以前の履歴を表示
| 年度 | DPS(円) | EPS(円) | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2018年3月期(第12期) | 18 | 27.64 | 65.1% |
| 2019年3月期(第13期) | 24 | 65.81 | 36.5% |
| 2019年4〜12月(第14期・9ヶ月変則期) | 30(中間12+期末18) | 84.61 | 35.5% |
| 2020年12月期(第15期) | 24(中間12+期末12) | △76.50 | —(赤字) |
| 2021年12月期(第16期) | 48 | 153.87 | 31.2% |
| 2022年12月期(第17期・日本基準) | 62 | 337.37 | 18.4% |
| 年度 | DPS(円) | EPS(円) | 配当性向 |
|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 74 | 248.55 | 29.8% |
| 2024年12月期 | 86 | 345.31 | 24.9% |
| 2025年12月期 | 100 | 330.82 | 30.2% |
| 2026年12月期(予) | 112 | 438.82 | 25.5% |
(注)
- 決算期変更(★年度ラベルの読み方): 2019年6月25日の定時株主総会決議で決算期を3月31日から12月31日へ変更したため、第14期は2019年4月1日〜12月31日の9ヶ月間の変則決算である(2025年12月期有価証券報告書の記載)。したがって「2017年12月期」「2018年12月期」という決算期は存在しない。上表は会社の期数と決算年月をそのまま年度ラベルに用いている
- 変則期を挟む比較の注意: 第14期30円 → 第15期(2020年12月期)24円は9ヶ月の変則決算と12ヶ月の通常決算の対比であり、単純な増減比較はできない。連続増配の起点は第16期(2021年12月期)で、その判定は変則期の影響を受けない
- 会計基準の境界: 2022年12月期(第17期)までは日本基準、2023年12月期(第18期)から国際会計基準で連結財務諸表を作成している。上表の2022年12月期は当時開示の日本基準値(EPS337.37円・配当性向18.4%)を採用した。同期は国際会計基準への移行に伴う遡及値(EPS364.73円・配当性向17.0%)も開示されており、そちらで見ると配当性向は1.4pt低くなる
- 非支配持分の扱い: 2023年12月期以降のEPS・利益が「親会社の所有者に帰属する」ベースかを決算短信と突合した。2025年12月期は当期利益393,836百万円・EPS330.82円が2026年8月7日開示の業績予想修正リリース記載の前期通期実績と一致しており、非支配持分を含まない値であることを確認している。2026年は会社予想
- 記念配当・特別配当・株式分割: 上表の各期に記念配当・特別配当の設定はなく、DPSはすべて普通配当。株式分割・併合も対象期間内には実施されていない(直近の分割は2013年10月1日の1:400で、対象期間より前)
- 配当政策の傾向: 純損益が赤字となった2020年12月期も年間24円を配当し、翌2021年12月期に48円へ倍増させて以降、5期続けて増配している。2021年12月期以降の配当性向はいずれも32%を下回る水準にとどまり、増配は原資の食い潰しではなく利益成長に沿って進んでいる
6-3. 配当の評価ポイント(3点)
- 増配構造: 2021年12月期の48円から5期連続で増え、当期予想112円は2020年12月期24円の4.7倍。この間の配当性向は一貫して32%を下回り、増配のペースが利益成長のペースを超えていない
- 方針シグナル: 中期経営計画(2025-2027)で「年間90円を起点とする累進配当」を明示し、自己株式取得と合わせて総還元性向50%以上を掲げる。同日決議の自己株式取得1,400億円(上限)を満額実施すれば、通期予想利益に対する総還元性向は約53%に届く。90円は2025-2027中計の開始時に置いた起点であって下限保証ではないが、累進配当が意味するのは「維持または増配」であり、方針が維持される限り基準になるのは起点ではなく到達済みの水準(前期100円・当期予想112円)である。当期予想112円は起点比+24.4%の位置にある
- 耐性実績: 直近5年に減配はなく、純損益が赤字だった2020年12月期(EPS△76.50円)も年間24円を配当した。同年も営業CFは2,929億円の黒字で、会計上の損失が現金の流出と直結しない上流開発の性質が配当を支えている
7. 詳細データ
7-1. 業績サマリー(中間期累計)
| 指標 | 当中間期 | 前年同期 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,000,495百万円 | 1,048,867百万円 | △4.6% |
| 売上総利益 | 572,911百万円 | 617,323百万円 | △7.2% |
| 営業利益 | 618,713百万円 | 616,882百万円 | +0.3% |
| 税引前中間利益 | 644,346百万円 | 644,984百万円 | △0.1% |
| 親会社の所有者に帰属する中間利益 | 263,147百万円 | 223,527百万円 | +17.7% |
| EPS | 226.33円 | 186.65円 | +21.3% |
| 営業利益率(中間期累計) | 61.84% | 58.81% | +3.03pt |
| ROE | —(中間期は非開示・通期予想は§7-3) | — | — |
(注)EPS+21.3%が親会社帰属中間利益+17.7%を上回るのは、自己株式取得により期中平均株式数が1,197,572,337株から1,162,656,732株へ△2.9%減ったため。
通期予想に対する進捗率
| 項目 | 当中間期 | 通期予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,000,495百万円 | 1,973,000百万円 | 50.7% |
| 営業利益 | 618,713百万円 | 1,223,000百万円 | 50.6% |
| 税引前利益 | 644,346百万円 | 1,278,000百万円 | 50.4% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 263,147百万円 | 510,000百万円 | 51.6% |
セグメント別(対前年同期比)
| 区分 | 売上 | 前期比 |
|---|---|---|
| 国内石油・天然ガス事業 | 112,663百万円 | +6.4% |
| 海外石油・天然ガス事業 — イクシスプロジェクト | 215,840百万円 | +17.5% |
| 海外石油・天然ガス事業 — その他のプロジェクト | 659,200百万円 | △12.0% |
| その他(再生可能エネルギー・電力関連、CCS・水素等) | 12,791百万円 | +27.0% |
(注)売上は外部顧客に対するもの。セグメント利益は親会社の所有者に帰属する中間利益で表示され、国内7,881百万円(△54.4%)・イクシス173,071百万円(+24.5%)・その他のプロジェクト77,879百万円(+7.8%)・その他2,436百万円(前年同期△5,331百万円から黒転)・調整額1,878百万円。短信のセグメント計は261,269百万円で、4セグメントの単純合計261,267百万円との2百万円差は開示上の端数処理による(261,269+調整額1,878=中間利益263,147百万円)。イクシス単独で中間利益の65.8%(前年同期62.2%)を占める。「その他のプロジェクト」が減収ながら増益となった理由を会社は「法人所得税費用の減少等」と説明しており、事業要因ではない。
業績増減要因の「業績の質」診断
| 観点 | 評価 | 解釈 |
|---|---|---|
| 一過性要因 | 🔴 | その他の営業収益が5,136→45,613百万円(+788.0%)へ膨らみ営業利益を押し上げた。決算説明会資料の内訳では456億円のうち376億円が為替差益(前年同期はゼロ)で、会社は利益増減の説明でこれを「イクシス減資に伴う為替差益 等」としている。増加分404億円を除くと営業利益は△6.3%となり、売上総利益△7.2%と整合する。資本取引に伴う非資金の為替差益であり、事業の稼ぎとは切り離して読む必要がある |
| 営業外損益 | 🟢 | 金融収益60,251百万円(△14.0%)・金融費用34,618百万円(△17.5%)。国際会計基準では為替差損益や持分法による投資損益が営業段階に入るため営業利益より下の振れは小さく、税引前中間利益△0.1%は営業利益の水準をほぼそのまま引き継いでいる |
| 純利益押し下げ/押し上げ要因 | 🔴 | 法人所得税費用は402,675→359,788百万円へ減り、実効税率は62.43%から55.84%へ△6.59pt。税引前が横ばいのまま親会社帰属中間利益が+17.7%伸びた分はこの税率低下だけで説明でき、事業要因による押し上げが見当たらない。会社の説明は決算説明会資料の増減分析にある「原油の減収・減益に伴う税金費用の減少 等 +400億円」という一行のみで、実効税率が下がった要因の定量的な分解は開示されていない |
| 開示の誠実性 | 🟡 | 売上収益の減少額483億円を数量△1,695億円・単価+492億円・為替+556億円・その他+162億円に分解し、円安に助けられた事実を自ら開示している。その他の営業収益の内訳も決算説明会資料で為替差益376億円と示されている。一方で実効税率が下がった要因の分解、国内事業の利益△54.4%の内訳(短信は「売上原価の増加等」の一言)はいずれも開示がない |
→ 業績の質: 親会社帰属中間利益+17.7%は為替差益と税率低下でつくられた数字で、事業の稼ぐ力を示す売上総利益は△7.2%と縮んでいる
7-2. 財務・CFサマリー
| 指標 | 前年同期・前期末(2025年12月末) | 当中間期・中間期末(2026年6月末) |
|---|---|---|
| 営業CF(1〜6月累計・百万円) | 427,908 | 553,888(+29.4%) |
| 投資CF(1〜6月累計・百万円) | △364,267 | △424,704 |
| 財務CF(1〜6月累計・百万円) | △40,126 | △91,024 |
| 現金及び預金(BS・百万円)※国際会計基準の科目名は「現金及び現金同等物」 | 168,407 | 216,190(+28.4%) |
| 短期有価証券(BS流動・百万円) | 0 | 0 |
| 現金及び現金同等物 期末残高(CF・百万円) | 168,407 | 216,190 |
| 自己資本比率(%) | 61.4 | 60.8(△0.6pt) |
CFの3行は1〜6月の6ヶ月累計(左列は前年同期)、現金及び預金・短期有価証券・現金及び現金同等物 期末残高・自己資本比率は各期末時点(左列は前期末=2025年12月末、右列は当中間期末=2026年6月末)。国際会計基準では連結財政状態計算書の「現金及び現金同等物」とCF計算書の期末残高が同一の金額になる。自己資本比率は親会社所有者帰属持分比率。
- 有利子負債: 1,427,500百万円。会社が決算説明会資料で当中間期末の有利子負債の合計を1兆4,275億円と開示しているため、本ブログの扱い(会社が「有利子負債合計」を開示していればその定義に従う)に沿ってこれを採用した。要約中間連結財政状態計算書で確認できるのは社債及び借入金1,318,323百万円(流動661,817+非流動656,506)で、会社開示値との差額109,177百万円については内訳の注記がない。当中間期の同計算書はリース負債を単独表示せず「その他の金融負債」(流動42,386+非流動105,377百万円)に含めており、2025年12月期有価証券報告書の金融商品注記では期末リース負債52,489百万円が開示されている(同注記に「リース負債は、連結財政状態計算書の『その他の金融負債』に計上しております」との記載あり)。差額にはこのリース負債やイクシス下流事業会社分の負債が含まれるとみられるが、会社資料に定義の注記がないため内訳は特定できない
- ネットキャッシュ: 現金及び預金216,190百万円 + 短期有価証券0百万円 − 有利子負債1,427,500百万円 = △1,211,310百万円。時価総額約48,313億円(株価¥3,837×期末発行済株式数1,259,136,067株・自己株式を含む)の△25.1%で、「マイナス(有利子負債超過)」帯の0/10点。連結財政状態計算書に有価証券の独立掲記はないため短期有価証券は0とした。なお流動資産の「その他の金融資産」744,375百万円は前期末477,393百万円から大きく増えており、CF計算書の定期預金の預入△674,062百万円・払戻+214,315百万円と整合する。会社は決算説明会資料でこの資金をアバディLNG開発準備資金と説明し、預入期間3か月超の有価証券等として期末に7,700億円強へ積み上がる見込みとしている。連結財政状態計算書に内訳の掲記がないため分子には算入していないが、仮に全額を算入しても△466,935百万円(時価総額比△9.7%)でマイナス帯は変わらない
- 営業CF安定性の評価対象5期(2021年12月期〜2025年12月期・単位百万円): 445,457 → 782,274 → 788,130 → 654,737 → 693,893。5期すべて黒字で、5期平均672,898百万円から△33.8%外れる2021年12月期の1件を除くと残り4期は±20%以内に収まるため4/5点。当中間期の営業CF553,888百万円は中間期の数値のため採点には使っていない
- 営業CF増加の中身: 前年同期比+125,980百万円のうち、法人所得税の支払額が393,094→241,265百万円と△151,829百万円減ったことがほぼ全てを説明する。棚卸資産の増減額は+3,592→△20,740百万円と運転資本は悪化しており、営業CFの伸びを事業の改善と読むことはできない
- 投資と還元の両立: 開発・生産資産の取得による支出は123,473→208,062百万円(+68.5%)、探鉱・評価資産の取得も10,943→21,603百万円へ拡大した。それでも営業CFと投資CFを合算したフリーCFは+129,184百万円の黒字で、配当金の支払額58,301百万円と自己株式の取得9,975百万円を賄っている
- 自己株式の動き: 期末自己株式数は93,742,368株→96,916,062株へ3,173,694株増えた。期末発行済株式総数(自己株式を含む)は1,259,136,067株で前期末と同数のため、当中間期に消却は行われていない。自己株式数には役員報酬BIP信託の保有分(当中間期末969,322株・前期末1,012,209株)が含まれる。2026年8月7日には取得総数5,000万株(上限)・取得価額1,400億円(上限)、取得期間2026年8月10日〜12月31日の自己株式取得も決議された
7-3. 通期業績予想(2026年12月期・当期予想)
| 項目 | 予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,973,000百万円 | △1.9% |
| 営業利益 | 1,223,000百万円 | +7.7% |
| 税引前当期利益 | 1,278,000百万円 | +8.9% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 510,000百万円 | +29.5% |
| EPS | 438.82円 | +32.6% |
| 年間配当 | 112円 | +12円 |
| 営業利益率(通期予想) | 61.99%(1,223,000百万円÷1,973,000百万円・本ブログ算出) | +5.54pt |
| ROE(通期予想) | 10.36%(510,000百万円÷4,924,864百万円・本ブログ算出) | +2.13pt |
(注)本予想は2026年8月7日に修正されたもので、前回予想(2026年5月13日公表)の親会社の所有者に帰属する当期利益3,500〜4,500億円というレンジの上限を上回る単一値へ引き上げられた。修正理由として会社はイクシスプロジェクトの堅調な生産状況と、第3四半期以降の原油価格・為替の前提見直しを挙げている。前提は原油(ブレント)が上期実績87.6ドル/バレル・下期予想75.0ドル/バレル(第3四半期80.0・第4四半期70.0)で会社公表の通期平均81.4ドル/バレル、為替が上期実績158.3円/ドル・下期予想160.0円/ドルで会社公表の通期平均159.2円/ドル。ROEの分母4,924,864百万円は期首自己資本4,747,158百万円(2025年12月期末)と中間期末自己資本5,102,570百万円の平均。前期比は2025年12月期実績を同じ基準で算出したROE8.23%(393,836百万円÷4,784,481百万円)・営業利益率56.45%との差。
7-4. データ出典の透明性
| 項目 | 出典 | 信頼度 |
|---|---|---|
| 中間期の売上収益・売上総利益・営業利益・税引前利益・親会社帰属中間利益・EPS | 2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(2026年8月7日開示) | 🟢 一次情報 |
| 通期業績予想・原油価格および為替の前提条件 | 同短信「1.(4)連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」/ 2026年8月7日「2026年12月期第2四半期(累計)連結業績予想と実績の差異及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」 | 🟢 一次情報 |
| 配当方針・中間配当の決定・期末配当予想の修正・甲種類株式の配当 | 2026年8月7日「剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正に関するお知らせ」/ 同短信「2.配当の状況」「甲種類株式の配当の状況」 | 🟢 一次情報 |
| 営業利益率(通期予想)・ROE(通期予想)・DOE | 本ブログ算出(会社予想値より計算・ROE分母は期首自己資本(前期末)と直近開示時点自己資本の平均) | 🟡 補助データ |
| 自己資本比率・現金及び預金・短期有価証券・社債及び借入金・発行済株式数・自己株式数 | 同短信「要約中間連結財政状態計算書」「発行済株式数(普通株式)」 | 🟢 一次情報 |
| 営業CF・投資CF・財務CF・現金及び現金同等物 期末残高 | 同短信「要約中間連結キャッシュ・フロー計算書」 | 🟢 一次情報 |
| セグメント別売上・セグメント利益・生産販売数量・販売価格 | 同短信「セグメント情報」「3.参考情報 生産、受注及び販売の状況」 | 🟢 一次情報 |
| 自己株式取得(5,000万株・1,400億円 上限) | 2026年8月7日「自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ」 | 🟢 一次情報 |
| その他の営業収益の内訳(為替差益376億円)・利益増減分析・アバディLNG開発準備資金・会社開示の有利子負債合計 | 2026年12月期 中間期 決算説明会資料(2026年8月7日) | 🟢 一次情報 |
| 決算期変更と第14期(9ヶ月変則期)・2022年12月期までの過去EPS/配当性向・リース負債52,489百万円・会計基準の境界 | 2021年12月期・2025年12月期 有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「金融商品」注記 / 2019年12月期 有価証券報告書「配当政策」 | 🟢 一次情報 |
| 過去配当履歴・通期営業CF5期 | EDINET DB | 🟢 一次情報 |
| 株価¥3,837(2026-08-26終値) | J-Quants API(JPX 公式) | 🟢 一次情報 |
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